脱Adobeはできるのか?Affinity Designerを約1年使ってみて分かったこと
- デザイン/Tech
- 2023/09/15
買い切りなのにイラレにそっくりという触れ込みの「Affinity Designer」を代用することで脱Adobe課金はできるのか?
Adobeのアプリがサブスク制になってから久しくなりますが、モリサワフォントの使用料が込み込みとはいえ個人で出すには安くないお値段ですよね…。
(途中のブランク期間を加味しても)イラレ使用歴15年以上になる筆者(最初に使ったのはイラレ8.0笑)が、Affinity Designerを半年使ってみてわかったことをご紹介します。
DTP制作者にとっては不足している機能がまだまだ多い
イラレにはあってAffinity Designerにはない機能を書き出してみると…
- ダイレクト選択ツール(白カーソル)がない
- スポイドツールがない(カラーピッカーならある)
- スウォッチでパターンを作れない?
- 縦書きに対応していない
- 日本式トンボがない
- ライブトレースがない
- ブレンドツールがない
- グラデーションメッシュがない
などなど
まだ他にもあるかもしれませんが…その中から筆者にとって、無くて困ったイラレの機能TOP5はと言いますと…。
- 1位 ダイレクト選択ツール(白カーソル)がない
- 2位 スポイドツールがない(カラーピッカーならある)
- 3位 ⌘7でサクッとマスクができない
- 4位 縦書きに対応していない
- 5位 日本式トンボがない
筆者が戸惑った1位のダイレクト選択ツール(白カーソル)がないことですが、 無意識のうちに思ってた以上に白カーソルを多用していたことが判明し(笑)一番使いづらさを感じた部分でした。
あとイラレで何気にめっちゃ頻繁に使っているのが「スポイドツール」。これもイラレの機能の方がとても便利で優秀なのです。
筆者は「スポイドツール」のかなりのヘビーユーザーなので、お仕事上これがないのは結構困ります。この機能の有無が、作業のスピード感にかなり直結していると言っても過言ではありません。
Affinity Designerのツールボックスにも一見それっぽい「カラーピッカー」というのは存在するのですが、こちらは文字通り色のみを拾えるツール。
イラレの方の「スポイドツール」は、色以外にもフォントやサイズ、エフェクト効果などまでをまるごとコピーできるのが良いところなんですよね。
あとマスクの方法が⌘7でサクサクマスクして⌘Gでグループ化もかけておき、トリミング調整はダイレクト選択ツール(白カーソル)で微調整というのを頻繁に繰り返すことって多くないですか?
Affinity Designerの場合はPhotoShopのレイヤーマスクの方が使用感が近いので、ここにも使いにくさを感じます。 これもお仕事で使うには作業スピードに直結する大きな差だなと思いました。
さらにDTP仕事に限定していうならば、日本式トンボが自在に使えて縦書きも難なく使えて、モリサワフォントも制限なく使えるという条件は必須事項ですよね。 そこまでガッツリ使いこなす必要のある方にはやはりAffinity Designerの力不足感は否めないでしょう。
熟練イラレ使いであればあるほど僅かな違いに使いづらさを感じるかも?
ざっくり使ってみたところ、ほとんどのショートカットはほぼ同じだったので、イラレを使うときに「ショートカットを頭より手が覚えている」くらいの方なら比較的楽に馴染めるかな?というのが第一印象でした。
なので、ある程度ツールボックスから探し出す手間自体は省けるのかなと思います。
ただし、ツールのアイコンの微妙な差があるため、ショートカットでは賄えない複雑な動作に関しては、この「微妙な差」が逆に使いづらさにつながっている気がします。
もしか、Affinity Designerに「ダイレクト選択ツール」が付き、イラレと同じ機能の「スポイド」が装備され、「マスク」の仕様がPhotoshopっぽいのじゃなくてもっとイラレに近づいたとしたら…。
さらに日本語の縦書きにも対応されて日本式トンボも搭載されたら…もっともっとおすすめできるアプリへと進化するんじゃないのかなぁと個人的には思います。
Affinity Designerで入稿データを使う裏技
とはいえAdobeのサブスクはやはりとてもお高い…。
どうしてもイラレを買うほどの使用量はないが、たまーに名刺やショップカードくらいは作りたい…という場合は、下記の手順でできるのではないかと思います。
- 1.オンラインの印刷屋さんが配布している名刺の入稿フォーマット(aiデータ)をダウンロードする
ダウンロードはこちら(印刷屋さんドットコム) - 2.Affinity Designerでデザインした名刺を入稿フォーマットに並べる
- 3.文字のアウトライン化等データを整える
- 4.PDFで書き出しをする
- 5.PDFでの入稿を受け付けている印刷屋さんに入稿する
その際にイラレではカバーしているリッチブラックやオーバープリントなどの設定は使わなくても良いデザインを意識して作成すれば、問題なく入稿データが作成できるのではないかと思います。
個人で完結するWeb制作やイラスト制作には十分使える
DTPでの使用に対してはまだまだもの足りなさを感じるAffinity Designですが、それでも買い切りのアプリとしてはかなりの多機能ソフトです。
なんらかの事情でAdobeのサブスク料金をかけ続けるのが難しかったり、イラレの料金はお高い…と感じる方が自宅で使用する分にはとても良いアプリだと思っています。
解像度の調整が自在にできたり、CMYKの設定ができたり、ベクターでのイラストが作成できることなどが、無料や安価なお絵かきソフトと一線を画す大きな違いなんじゃないかと思います。
iCloudを使って連携すればiPad版でApple pencilを使って書いたイラストをPC版に持ってくることが可能なのもかなり便利だと感じます。
長年のイラレユーザーにとっては、手が慣れるまではちょっと使いにくさを感じるかもしれませんが、そこを乗り越えさえすればかなり使えるソフトなのではないでしょうか。
Affinity Designerの最大のメリットは買い切り10,400円というお手軽さ
筆者がAffinity DesignerとAffinity Photoを買った当時は通常価格8,000円で、セール時期になると半額の4,000円とかで買えてしまう…という感じだったのですが、最近Affinity Designer2にバージョンアップして価格も10,400円に値上がりしました。
それでもAdobeのコンプリートプランをデジハリ受講価格などで購入する価格よりもはるかにお安いですね。
PC版とiPad版がセットになった「Affinity V2ユニバーサルライセンス」だと24,400円だそうで、iPad版も全部揃えてがっつり使いこなしたいという方なら通常価格時でもこちらの方がちょっとお得になるようです。
待てるならセール時期の購入が吉
Affinity DesignerもAffinity Photoも割と頻繁にセールをやっていまして、筆者もセール時期が来るのを待って購入しました。
参考までに、筆者は下記のタイミングでセール価格で購入しました。
2022年の1月にAffinity DesignerとAffinity PhotoのiOSアプリを1,220円で購入
2022年5月にPC(Mac)版 Affinity DesignerとAffinity Photoをセール価格でそれぞれ4,000円で購入。
総額10,440円…
…かなり、お得に買えました(笑)。
特に急いでいないという方であれば、年に何回かセール時期があるようなのでタイミングを待ってからの購入をおすすめします。
注意点はアプリのバージョンアップ時の都度課金が必要なところ(それでもAdobeのサブスクよりは格安)
今回V2(バージョン2)が出たということで、V1(初代バージョン)の所有者にもV2へのバージョンアップの案内が届いたのですが、下記のような案内でした。
V1所有者の場合、バージョン2ユニバーサルライセンスに25%オフでアップグレードできます(わずか18,300円の支払いですべてのプラットフォームのすべてのV2で利用可能)。
2.2に含まれる全てのものを取得できるだけでなく、将来的なV2ポイントアップデートも無料で入手できます。
ということで、重要な便利機能が追加したりなどでバージョンアップがしたくなったときには75%程度の割引価格で、前回セール時期にお得に買った人にとっては倍くらいのお値段で再購入するくらいの出費が必要になるようです。
V2のセール時期にV1所有者がセール価格で購入できるかどうかは不明ですが…。
筆者はとりあえずV2へのアップグレードは見送り、もしか「縦書き対応」をしたり「日本式トンボ機能が追加」などの重要なアップデートが来たらその時に考えようかなと思います。
Affinity Designer for iPadの使い方ならAmity Senseiが一番わかりやすくておすすめ
実は筆者がAffinity Designerを知ることになったきっかけがこのAmity-Senseiの動画でした。
このお方、京都出身のべっぴんさんで愛嬌たっぷりでめっちゃかわいい。そして何より説明がわかりやすい!
iPadのお絵かきソフトに関する書籍も出されている本格派の方ですので、Affinity Designerに関しては iPad版の方にはなりますが、今からiPad版のAffinity Designerの使い方をマスターしたいという方にはAmity-senseiの動画がおすすめです。
まとめ
まとめますと…
結局下記の方にとってはAffinity Designerはイラレの代用品にするのは難しいと思います。
- たくさんの人とデータを共有して入稿データを頻繁に作成する必要がある方
- Webデザインでの使用でも取引相手に納品データの指定(AIデータまたはPSDデータでの納品など)がある方
- DTP系のお仕事がメインの方
対して、Affinity Designerをおすすめできる人は…
- 個人的にベクターイラストを作成してちょっとだけSNS投稿やブログの挿絵などに使いたい方
- 納品データがJPEGとかで大丈夫な仕事環境の方
- データ共有などの縛りのない環境でのWEBデザイン
- 年に数回程度名刺やショップカードなどの作成ができればよいという方
ということで、イラレユーザー歴15年以上の筆者がAffinityDesignerを約1年以上使ってみてわかったことをご紹介しました。
この記事が誰かのお役にたてると幸いです。